秋は、夏の厳しい暑さがやわらぎ、犬にとっても過ごしやすい季節です。
ところが、秋雨前線や台風の影響で雨の日が続くと、「食欲が落ちた」「寝ている時間が増えた」「お腹の調子が安定しない」「足腰が動かしにくそう」といった変化が見られることがあります。
特にシニア犬や持病のある犬は、気温や湿度、日照時間、運動量などの変化に体がついていけず、不調が表れやすくなります。
秋の長雨を元気に乗り越えるためには、特別なことをするよりも、毎日の小さな変化に気づき、冷やさない・湿らせない・動かす・休ませるという基本を整えることが大切です。
秋は、昼間は暖かくても朝晩は急に冷え込むことがあります。
雨の日は日差しが少ないため室温も上がりにくく、床に近い場所で過ごす犬は、人が感じている以上に冷えていることがあります。
小型犬、短毛種、痩せている犬、シニア犬、子犬、関節や心臓などに持病のある犬は、特に注意が必要です。
体が冷えると必ず病気になるわけではありませんが、活動量が落ちたり、筋肉がこわばったり、お腹がゆるくなったりする犬もいます。
耳や足先が少し冷たいだけで、すぐに「冷え」と判断する必要はありません。犬の様子、室温、食欲、排泄、動き方などを総合して見ることが大切です。
長雨の時期は、室内の湿度も高くなります。
散歩で被毛や足先が濡れたままになっていたり、垂れ耳の内側や指の間に湿気がこもったりすると、皮膚のバリア機能が乱れ、細菌や酵母などが増えやすい環境になります。
次のような様子がないか確認しましょう。
散歩の後は、タオルで表面を拭くだけでなく、肉球の間や指の間、お腹、脇、内股、垂れ耳の周辺まで確認します。
ただし、耳の奥まで綿棒を入れたり、赤みや炎症がある皮膚を強くこすったりするのは避けましょう。
雨が続くと、どうしても散歩の時間や回数が減ります。
数日程度、散歩が短くなったからといって、すぐに筋力が大きく低下するわけではありません。しかし、もともと運動量の少ない犬やシニア犬では、動かない日が続くことで足腰がこわばり、立ち上がりや歩き始めがぎこちなくなることがあります。
また、散歩は運動だけでなく、外のにおいを嗅ぐ、周囲を観察する、気分を切り替えるという大切な時間です。
外に出られない日が続くと、退屈から吠える、落ち着かない、物を壊す、過度に体を舐めるなどの行動が増える犬もいます。
運動量が減ると、いつもと同じ量の食事を与えていても、お腹が空きにくくなることがあります。
また、気温の変化や生活リズムの乱れなどが重なることで、便がやわらかくなったり、食べ始めに時間がかかったりする犬もいます。
一度食べなかったからといって、すぐに好きなものを次々と加えてしまうと、かえって胃腸に負担をかけたり、「待てばもっと好きなものが出てくる」と学習したりすることがあります。
食欲だけを見るのではなく、水分摂取量、元気、排便、嘔吐の有無、体重なども一緒に確認しましょう。
雨や台風の前後に、「よく眠る」「落ち着かない」「古傷や関節が気になるようだ」と感じる飼い主さんもいます。
人では気象変化と痛みや体調との関係が研究されていますが、犬については、気圧の変化が不調を直接引き起こすと断定できるほど十分な根拠はまだありません。
ただし、天候の変化に合わせて毎回似た様子が見られる場合は、記録しておくと役立ちます。
「気圧のせい」と決めつけず、痛みや病気が隠れていないかを見ることも大切です。
人が快適でも、床付近は冷えていることがあります。犬が普段過ごしている高さに温湿度計を置くと、より実際の環境に近い状態を確認できます。
湿度が高い日は、エアコンの除湿機能や除湿器、サーキュレーターなどを活用しましょう。
ただし、冷たい風を犬の体へ直接当てないようにします。
寝床は窓際や冷たい床の上を避け、薄手の毛布やマットを用意します。暑くなったときに犬自身が移動できるよう、暖かい場所と涼しい場所の両方を選べる環境が理想です。
レインコートを着せていても、足先やお腹は濡れています。
帰宅後は、次の部分を丁寧に確認しましょう。
タオルで水分を取り、必要に応じてドライヤーを弱い風、低めの温度で使用します。皮膚に近づけすぎず、同じ場所へ長時間当てないようにしてください。
泥はねが気になると毎回シャンプーしたくなりますが、洗いすぎは皮膚に必要な皮脂まで落としてしまいます。汚れの程度に合わせ、ぬるま湯で流す、濡れタオルで拭くなど、負担の少ない方法を選びましょう。
雨の日に、滑る床の上でボールを追わせたり、無理に激しい運動をさせたりする必要はありません。
短時間の運動を、一日の中で数回に分けるだけでも十分です。
例えば、
といった方法があります。
シニア犬や関節に不安のある犬は、滑り止めマットを敷き、急旋回やジャンプを避けます。痛みがある犬に運動を無理強いしてはいけません。
毎日のスキンシップは、早期発見にもつながります。
背中をゆっくり撫でながら、左右の筋肉の硬さ、触られるのを嫌がる場所、皮膚の赤み、できもの、かさぶたなどを確認します。
足先から体の中心へ向かってやさしく撫でたり、背中や腰を手のひらで包むように温めたりするのもよいでしょう。
ただし、強く揉む必要はありません。痛がる、振り向いて嫌がる、唸る、体を逃がすなどの反応があれば中止してください。
運動量が大きく減っているときは、体重や体型を見ながら食事量を調整します。ただし、自己判断で急に大幅に減らす必要はありません。
冷蔵庫から出したばかりの冷たい食事よりも、人肌程度に温めたり、ぬるま湯を加えて香りを立たせたりすると食べやすくなる犬もいます。
水分摂取量が減っている場合は、いつものフードにぬるま湯を加える方法もあります。
療法食を食べている犬や、腎臓病、心臓病、膵炎、糖尿病、食物アレルギーなどがある犬は、トッピングや食事量を変更する前に、かかりつけの獣医師へ相談してください。
東洋医学では、長雨や湿気の多い環境が続く時期には、「湿邪」という余分な湿気の影響を受けやすいと考えます。
湿邪の特徴は、重く、停滞しやすいことです。
そのため、
といった状態と結びつけて考えることがあります。
また、東洋医学でいう「脾」は、食べたものから体に必要なものをつくり、水分の巡りを整える働きと関係するとされています。
ただし、これは東洋医学に基づく体の見方であり、獣医学的な診断名ではありません。
元気や食欲の低下、下痢、皮膚炎、歩き方の変化などがある場合は、「湿気のせい」「季節のせい」だけで済ませず、必要に応じて動物病院を受診しましょう。
健康な犬で、食事制限がない場合は、普段の食事に少量取り入れやすい食材として、
などがあります。
温かく加熱した食材は香りが立ち、食欲が落ち気味の犬でも食べやすくなることがあります。
ただし、「体によい食材」であっても、その犬に合うとは限りません。初めての食材は少量から試し、便や皮膚の状態を確認してください。
また、トッピングが増えるほど栄養バランスが崩れたり、カロリー過多になったりする可能性があります。基本の食事を大きく変えない範囲で楽しみましょう。
次のような変化が見られた場合は、天候の影響と決めつけず、獣医師へ相談してください。
子犬、超小型犬、ハイシニア犬、持病のある犬では、症状が軽く見えても早めの相談が安心です。
秋の長雨の時期は、犬の体調が大きく崩れるというよりも、「なんとなくいつもと違う」という小さな変化から始まることが少なくありません。
食べた量、便の状態、散歩時間、睡眠、皮膚の状態、歩き方などを簡単に記録しておくと、その犬なりの傾向が見えてきます。
大切なのは、雨だから何もできないと考えるのではなく、その日の状態に合わせて過ごし方を調整することです。
短い散歩でも、ゆっくりにおいを嗅ぐことができれば、犬にとってはよい刺激になります。外に出られない日は、室内で少し頭と体を使い、その後は安心して休める時間をつくります。
冷やさないこと
濡れたままにしないこと
無理のない範囲で動くこと
食欲や排泄を観察すること
そして、いつもと違う状態が続いたら早めに相談すること
毎日の小さなケアを重ねながら、愛犬と一緒に秋の長雨を穏やかに乗り越えていきましょう。
※本記事は、健康管理に関する一般的な情報と東洋医学的な養生の考え方をご紹介するものです。病気の診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。