そうめんや冷ややっこ、刺身の添え物など、夏の食卓で活躍する「大葉」。
さわやかな香りがあり、食欲が落ちやすい季節にも取り入れやすい薬味です。
人の薬膳では季節の養生に使われることがありますが、犬にも同じように与えてよいのでしょうか。
今回も、
「人にとって体によい食材なら、犬にもよいはず」
と単純に考えず、人と犬の違いを整理しながら見ていきましょう。
一般に「大葉」と呼ばれているのは、青じその葉です。
植物としてはシソ科シソ属に分類され、学名は「Perilla frutescens var. crispa」とされています。
前回ご紹介した茗荷はショウガ科、大葉はシソ科です。どちらも日本の食卓では薬味として使われますが、植物としては異なる仲間です。
また、大葉はネギやニラなどの「ネギ属」ではありません。そのため、ネギ類と同じタイプの中毒を起こす食材として考えるものではありません。
ただし、
「ネギ類ではない=犬が安全に食べられる」
という意味ではないことも覚えておきたいところです。
大葉は、人の薬膳では香りを生かして、気分や胃腸の働きを整えたいときなどに用いられてきた食材です。
蒸し暑さで食欲が落ちたときや、食事が重く感じられるときに、料理へ少し添えることがあります。
また、食品としての大葉にはβ-カロテン、カルシウム、カリウム、食物繊維などが含まれています。
ただし、薬味として一度に食べる量はそれほど多くありません。
栄養成分が豊富だからといって、少量の大葉だけで大きな栄養効果が得られると考えるのは適切ではありません。
大葉のよさは、栄養成分の多さだけではなく、料理に季節感や香りを添えられるところにもあります。
犬に大葉を食べさせた場合の安全量や、健康への有用性については、十分な情報が確認されているとはいえません。
一方、同じシソ属の植物については、葉や種に含まれる成分による動物への毒性が報告されています。
ただし、主な報告は牧草地で植物を多量に食べる牛や馬などに関するものであり、家庭で使う青じその葉を犬が少量口にした場合と、そのまま同じ条件ではありません。
ここで大切なのは、
「ほかの動物で毒性が報告されているから、犬にも一口で強い中毒が起こる」
と決めつけないこと。
同時に、
「犬の中毒食材として有名ではないから、安心して与えられる」
とも決めつけないことです。
犬における安全量や継続摂取の影響が分からない以上、薬膳食材として積極的に取り入れる必要はないでしょう。
大葉の香りを利用すれば、食欲が落ちた犬も食べてくれるのでは、と考える方もいるかもしれません。
しかし、大葉の強い香りを好む犬ばかりではありません。嗅覚の鋭い犬にとっては、人が感じる以上に刺激的な香りになる可能性もあります。
食欲が落ちているときは、大葉を加えて様子を見る前に、まず食欲低下の原因を考えることが大切です。
特にシニア犬では、暑さだけでなく、
・口や歯の痛み
・吐き気や胃腸の不調
・腎臓や肝臓などの病気
・薬の影響
・痛みや強い疲労
などが隠れていることがあります。
いつものごはんを食べない状態が続く場合は、香りのある食材で食べさせようとするだけでなく、体調を確認しましょう。
料理中に落とした大葉のかけらを、犬が一枚程度食べてしまったからといって、すぐに重い中毒が起こると決まったわけではありません。
慌てて自己判断で吐かせることはせず、食べた量と時間を確認して様子を見ます。
その後、
・繰り返す嘔吐や下痢
・よだれが多い
・呼吸が苦しそう
・元気がない
・ふらつきがある
・食欲がなくなった
などの変化が見られた場合は、早めに動物病院へ相談してください。
大量に食べた場合、持病がある場合、超小型犬や子犬の場合も、症状がなくても獣医師へ確認すると安心です。
大葉の葉を少量口にすることと、大葉やシソ由来の精油、アロマオイル、濃縮エキスを使用することは同じではありません。
濃縮された製品は、食品として使う葉よりも成分量が多くなります。
犬がなめたり、食事に混ぜたり、皮膚へ塗ったりするのは避けましょう。
大葉入りの人用ドレッシングや加工食品も、塩分だけでなく、玉ねぎ、にんにく、香辛料などが含まれている可能性があります。味付けされたものは犬に与えないでください。
大葉は、人にとっては夏らしい香りを楽しめる身近な薬味です。
しかし、人の薬膳で使われていることと、犬にとって安全で有用であることは同じではありません。
犬については、安全量や継続的に与えた場合の情報が十分ではないため、薬膳食材として積極的に取り入れることはおすすめしません。
少量を誤って食べた場合まで、必要以上に怖がることはありません。ただし、その後の体調はよく観察してください。
「危険だと証明されていない」と
「安全性が確認されている」は別のこと。
犬の薬膳では、人の食材の効能をそのまま当てはめるのではなく、犬の体、年齢、病気、主食との組み合わせまで考えることが大切です。
身近な食材だからこそ、一度立ち止まって考えてみませんか。
次回も、「人には薬膳。では、犬にはどうなの?」という視点から、季節の食材を取り上げていきます。
※本記事は日々の食事と養生についての一般的な情報です。診断や治療を目的とするものではありません。持病がある犬、療法食を食べている犬、投薬中の犬は、かかりつけの獣医師の指示を優先してください。