秋になると、店頭に並び始める柿。
やさしい甘みがあり、そのまま食べてもおいしく、昔から日本の秋を代表する果物として親しまれてきました。
薬膳では、季節や体調に合わせて食材を選びます。柿も、秋の乾燥が気になる時季に取り入れられてきた食材のひとつです。
では、犬にも柿を食べさせてよいのでしょうか。
結論からいうと、よく熟した柿の果肉は、種やヘタを取り除けば、犬も少量食べられます。
ただし、人にとって体によい食材だからといって、犬にも同じ量や同じ目的で与えられるわけではありません。
今回は、薬膳から見た柿の性質と、犬に与えるときの注意点を分けて考えてみましょう。
薬膳では、柿は体にこもった余分な熱を冷まし、乾燥しがちな喉や肺を潤す食材とされています。
秋は空気が乾燥し始め、喉の違和感や空咳、口の渇きなどが気になりやすい季節です。そのような時季に、みずみずしい柿を食べることは、昔から秋の養生のひとつと考えられてきました。
ただし、薬膳では柿は体を冷やす性質を持つ食材ともされています。
人でも、冷えやすい人や胃腸の弱い人がたくさん食べると、お腹が冷えたり、便がゆるくなったりすることがあります。
「旬の食材だから、たくさん食べるほどよい」というわけではなく、その人の体質や体調に合わせることが大切です。
よく熟した柿の果肉には、犬に特有の中毒を起こす成分があるとは一般に考えられていません。
種、ヘタ、硬い部分を取り除き、食べやすい大きさにした果肉であれば、健康な犬は少量楽しむことができます。
柿には水分のほか、食物繊維やβカロテン、ビタミンCなどが含まれています。
ただし、犬は体内でビタミンCを合成できるため、柿を食べなければビタミンCが不足するということではありません。
また、柿を食べれば犬の病気を予防できる、咳や乾燥が改善する、という十分な根拠があるわけでもありません。
犬にとっての柿は、治療や栄養補給を目的に積極的に食べさせるものではなく、秋の味覚を少し楽しむためのおやつと考えるのがよいでしょう。
犬に柿を与えるとき、特に注意したいのが種とヘタです。
柿の種や硬いヘタは消化できず、そのまま飲み込むと喉に詰まったり、胃腸内で異物となったりする可能性があります。特に体の小さな犬では、少しの大きさでも負担になります。
種なし柿であっても、念のため切り分けながら種が残っていないか確認しましょう。
熟していない硬い部分も避け、やわらかい果肉だけを、小さく切るか潰して与えます。
柿の皮に犬に対する強い毒性があるわけではありませんが、果肉より硬く、消化しにくい部分です。
健康な成犬がごく少量食べても、すぐに問題になるとは限りません。しかし、消化機能が低下しているシニア犬や、お腹の弱い犬、小型犬には、皮をむいたものの方が安心です。
ハイシニア犬に与えるなら、よく熟した柿の皮をむき、やわらかい果肉を少し潰して、ほんのひと口から試します。
「食べられるかどうか」だけでなく、その子が無理なく消化できる状態に整えることも、シニア犬の食事では大切です。
柿は甘みが強く、糖質を含む果物です。
犬が喜んで食べるからといって、何切れも与えると、カロリーのとりすぎや体重増加につながります。食物繊維も含まれるため、一度にたくさん食べると、下痢や軟便、嘔吐などを起こすことがあります。
初めて与えるときは、犬の体格にかかわらず、ごく少量から始めます。
特に小型犬やシニア犬には、角切りを何個も与えるのではなく、潰した果肉をスプーンの先に少しのせる程度から様子を見るとよいでしょう。
食べた後は、便の状態、吐き気、食欲、かゆみなど、いつもと違う様子がないか確認します。
次のような犬には、自己判断で与えない方がよい場合があります。
・糖尿病がある
・肥満傾向にある
・腎臓病などで食事療法をしている
・お腹が弱く、下痢や軟便を起こしやすい
・食物アレルギーの治療中である
・獣医師からおやつや果物を制限されている
柿にはカリウムも含まれています。
健康な犬が少量食べる分には過度に心配する必要はありませんが、腎臓病などで療法食を食べている犬は、現在の検査値や治療内容によって適否が異なります。
療法食を食べているから絶対に食べられない、あるいは少量なら必ず大丈夫、と一律には決められません。かかりつけの獣医師に確認しましょう。
干し柿は、生の柿から水分が抜け、その分、糖分やカロリーが凝縮されています。粘りも強く、犬にとっては噛みにくく、喉に詰まらせる心配もあります。
砂糖を加えていない干し柿であっても、犬のおやつとして積極的に選ぶ必要はありません。
柿を楽しませるなら、干し柿ではなく、よく熟した生の果肉をほんの少しにしましょう。
薬膳では、柿は秋の乾燥を意識した食材として扱われます。
しかし、その考え方をそのまま犬に当てはめて、「喉を潤すから犬にもたくさん食べさせよう」と考えるのはおすすめできません。
人と犬では、必要な栄養も消化の仕方も、適切な量も違います。
柿は犬の体調を治す薬ではありません。いつもの食事を基本に、その子の体調に問題がなければ、季節を一緒に味わうための小さなお楽しみとして取り入れるものです。
種とヘタを取り、できれば皮もむいて、よく熟した果肉をほんのひと口。
「体によさそうだからたくさん」ではなく、「秋が来たね」と一緒に味わうくらいが、犬にとってちょうどよい柿の楽しみ方です。
※この記事は一般的な情報を紹介するもので、診断や治療に代わるものではありません。持病がある犬、療法食を食べている犬、体調に不安がある犬については、かかりつけの獣医師にご相談ください。