日本では長い間、国内での狂犬病発生が確認されていません。
そのため、「狂犬病予防注射は毎年受けているけれど、実際に狂犬病が発生したらどうなるの?」と考えたことのある飼い主さんは、案外少ないかもしれません。
わたし自身、普段から犬の鑑札や狂犬病予防注射済票の装着についてお話しする機会があります。
ではもし、自分が暮らしている地域で狂犬病が発生したら?
狂犬病予防法を改めて読んでみると、飼い主として知っておきたいことがありました。
狂犬病予防法第10条では、狂犬病が発生した場合、都道府県知事が区域と期間を定め、その区域内の犬について、
「口輪をかけ、又はこれをけい留すること」
を命じることが定められています。
そして大切なのが、対象について「その区域内のすべての犬」と書かれていることです。
つまり、
「うちは完全室内飼いだから」
「散歩に行かないから」
「ほかの犬と接触しないから」
という理由だけで、法律の対象外になるわけではありません。
狂犬病予防法には、「室内飼育の犬を除く」といった規定はないからです。
ここは誤解しないようにしたいところです。
第10条は「口輪又はけい留」と規定しています。
したがって、「狂犬病が発生したら、家の中でもすべての犬が24時間口輪をつけなければならない」という意味ではありません。
一方で、「室内飼育なら何もしなくていい」と法律だけから判断することもできません。
実際に狂犬病が発生した場合には、都道府県知事が区域や期間を指定して措置を行います。
自分の犬が対象区域にいるのであれば、そのとき発表される行政の公示・指示を確認する。
これが基本になります。
さらに状況によっては、一斉検診や臨時の予防注射、犬の移動の禁止・制限などが行われる可能性もあります。
そこで私が改めて考えたのが、口輪への馴化です。
口輪というと、
「噛む犬がするもの」
「攻撃性のある犬につけるもの」
というイメージを持つ方も多いと思います。
でも、そうとは限りません。
災害時、ケガをしたとき、緊急搬送や治療が必要になったとき。そして今回のように感染症対策として行政から求められる可能性もあります。
必要になったその日に初めて口輪をつけられたら、犬にとっては大きなストレスになるでしょう。
だからこそ、
「口輪が必要な犬だから練習する」のではなく、「いつか必要になるかもしれないから、平時に練習しておく」
という考え方があってもいいと思います。
おやつを使いながら、まずは口輪を見るところから。鼻を入れる、数秒そのままでいる、ベルトを留める、装着したまま少し歩く……。
無理に装着するのではなく、「これは怖いものではない」と少しずつ経験させておく。
これも立派な防災・危機管理トレーニングです。
そして、もう一つ。
普段からお伝えしていますが、鑑札と狂犬病予防注射済票は、原則として犬への装着が法律で義務づけられています(マイクロチップを鑑札とみなす制度の対象となる場合などがあります)。
「ちゃんと登録している」
「毎年予防注射をしている」
だけで終わらず、装着についても一度確認してみてください。
狂犬病が発生していない今だからこそ、
登録する。
予防注射を受ける。
鑑札・注射済票を装着する。
そして、口輪にも少しずつ慣れておく。
非常事態になってから慌てるのではなく、何も起きていないときに準備しておく。
それが、犬と暮らす私たちにできる「備え」の一つではないでしょうか。